転生したのに0レベル
〜チートがもらえなかったので、のんびり暮らします〜


385 僕が歩いてったら、みんなびっくりしちゃうよね



 僕がイーノックカウに行くのにお父さんが反対してたのは、ロルフさんちにジャンプで行くとストールさんたちのお仕事の邪魔になっちゃうからだよね?

 でもイーノックカウ西門の近くにある木のそばだったら僕一人でも街に行けるでしょ?

 だからそこだったら行っていいよって言ってくれるって思ってたのに、お父さんはダメって言うんだよ。

「え〜、なんで? あそこだったらロルフさんちに迷惑かけないよ?」

「ああ、確かにそうだな」

「だったらいいじゃないか!」

 だから僕、何で? ってお父さんに聞いたんだよね。

 そしたらお父さんは、ちょっと考えてみてって。

「ルディーン。お前の言う通り、あの場所からならイーノックカウはすぐそこだから一人でも簡単に行けるだろうな」

「でしょ? だったらいいんじゃないの?」

「だけどな、西門の門番にはどう説明するんだ? グランリルの村から歩いてきましたって言ったら、すごく驚かれると思うぞ」

 グランリルの村からイーノックカウまでは、馬車を使ってもすっごく時間がかかるくらい遠いんだよね。

 なのにそんなとこから歩いてきたなんて言ったら、それが大人の人だったとしても門番の人たちはびっくりするよってお父さんは言うんだ。

「これがまだイーノックカウに行った事が無い子供なら、もしかするとすぐ近くの村から一人で来たのかもと思われるかもしれない。まぁ、それでもルディーンくらいの子だったら、すぐに保護されて親元に連絡がいくだろうけどな」

 お父さんはね、僕はもう何度かイーノックカウに行ってるし、何より街に入る時の身分証明に使う冒険者ギルドのギルドカードにはグランリルの村に住んでいると記録されてるからそれを出しただけですぐに遠くから来たって解るんだよって。

「そっか。それなのに僕が歩いてったら、門番の人はびっくりしちゃうね」

「びっくりする以前に、すぐさま冒険者ギルドに連絡が行って俺とシーラはギルマスの爺さんから呼び出しをくらうと思うぞ。こんな小さな子を、歩いてこんな遠くまで来させるなんてってな」

 馬車とかに乗って他の人と一緒に来たって言うのなら怒られないけど、遠くの街まで一人で歩いて行かせたなんて事になったらきっとギルドマスターのお爺さんはかんかんになるよってお父さんは言うんだよ。

 それにね、お父さんたちが迎えに来るまでの間、僕もお爺さんギルドマスターとルルモアさんに怒られるよって。

「じゃあさ、イーノックカウに入らずに森に行くのは? それだったら、みんなびっくりしないよ」

「おい、ルディーン。お前、前にルルモアさんが言っていたことを忘れたのか?」

 ジャンプで飛んだ場所から直接森に行っちゃえば、僕が遠くから来たなんてだあれにも解んないよね?

 だから僕、お父さんにそう言ったんだけど、そしたらそれもダメなんだって。

「森に入るのに冒険者ギルドで札を渡すのは、入った者が帰ってこなかった時にすぐ気がつけるようにだと言われただろ?」

 そう言えば前にルルモアさんが、森に行く時に冒険者ギルドで札を貸してもらうのは、帰ってきた時に入街料を払わなくてもよくなるってだけじゃなくって、もし帰ってこなかったらすぐに解るようにするためなんだよって言ってたっけ。

「でもお父さん、イーノックカウの魔物はみんな弱っちいのしかいないから、一人で行ってもいいって言ったよ?」

「ああ、確かにあの森の魔物相手にルディーンが怪我を負わされるなんて事にはならないだろう。それにもし怪我を負ったとしても、ルディーンは治癒魔法が使えるから帰ってこれないなんて事は多分ないとは俺だって思ってるぞ」

 イーノックカウの森だったら、僕一人で入っても帰ってこれなくなるなんて事は無いってお父さんも思ってるんだって。

 だって怪我したら魔法で治せるし、もし森ん中で迷子になってもジャンプの魔法で帰ってこれるからね。

 でも、それとこれとはまた別のお話なんだよってお父さんは言うんだ。

「これはな、冒険者ギルドが決めた規則なんだ。そりゃあずるする人もいるだろうし、面倒だと言ってやらない人もいるとは思う。でもお父さんとしては、ルディーンには規則を平気で破る子にはなって欲しくないんだよ」

 ルディーンはいい子だから解るよな? って笑うお父さん。

 そして僕も、

「うん! 規則はちゃんと守んないとダメだもんね」

 ずるっこはしちゃダメなんだよねって笑ったんだ。


 せっかくいい考えだと思ったのに、今のまんまじゃ近くの森にもイーノックカウの森にも行けなくなっちゃった。

 でもさ。

「歩いてったらダメって事は、何か乗り物があればいいって事なのかなぁ?」

 さっきお父さんも、誰かの馬車に乗っけて行ってもらったなら門番の人もびっくりしないって言ってたよね。

 って事はだよ、もしかしたら僕が一人で乗ってける乗りもんがあればいいって事なのかも?

「でもお母さん、乗りもんがあっても村から行くのはダメって言ってたんだよね」

 さっき西門の近くにジャンプで行けるって話した時は、お母さんもそれなら行っていいって感じだったでしょ?

 だからそこから乗りもんに乗っていくんだよって言えば、お母さんはきっと許してくれる。

 ただ、それにもちょっと問題があるんだよね。

「ジャンプの魔法、僕が持てるくらいの大きさのもんじゃないと一緒に飛べないんだよなぁ」

 もっとレベルが上がって上位の転移魔法がつけるようになったらもっとおっきなものでも運べるようになるんだけど、今の僕だと抱えて持ってけるくらいのものが限界なんだよね。

 それにジャンプは生き物も一緒に飛ぶ事はできないから、お馬さんみたいに乗り物を引っ張ってける動物も連れてけないんだ。

「う〜ん。って事は僕が持てるくらいちっちゃい、乗りもんの魔道具を作んないとダメって事か」

 そう思っていろいろ考えてみたんだけど、僕が知ってる乗りもんって言ったら馬車でしょ?

 だからどんなにちっちゃくしても、僕が乗るんだったらどう考えてもおっきくなっちゃうんだよね。

「なんか他になかったっけ?」

 僕は両手を胸んとこで組んで、頭をこてんって倒しながら一生懸命考えたんだよ。

 そしたらね、前の世界にはいろんな乗りもんがあった事を思い出したんだ。

「でも、前の世界のってみんなおっきいんだよなぁ」

 僕が思い出したのは車ってのとオートバイっていうのの二つ。

 この二つはね、お馬さんとかが引っ張んなくても動く乗りもんだったんだ。

 だからそう言うのなら魔道具で作れるかも? って思ったんだけど、その二つはどっちもすっごくおっきいんだよね。

 それにオートバイってのは輪っかが二個しかついてないんだよ?

 そんなのに乗ったら、僕、きっと転んじゃうよねって思ったんだ。

「車ってのは馬車みたいに輪っかが4つあるから乗っても転ばないんだけど、僕が乗ってこうって思ったら馬車とおんなじくらいの大きさになっちゃうんだよなぁ」

 あれ? そう言えば前の世界に、ちっちゃい子が乗って遊ぶ乗りもんがあったんじゃなかったっけ?

「そうだ、三輪車ってのがあった!」

 あれだったら輪っかが三つあるから転ばないもん!

 そりゃあ、前の世界にあったまんまのだったらちっちゃすぎて乗れないけど、僕が乗っても大丈夫くらいのおっきに作ればいいよね?

「あっ、でもそんなにおっきく作ったら、ジャンプで持ってけないかも? でもでも、他にいい考えが何にも浮かばないしなぁ」

 まぁ、とりあえず作ってみて、もしダメだったらまた考えればいっか。

 イーノックカウに持ってけなくっても、もしかしたら何かの役に立つかもしれないよね。

 って事で僕はとりあえず、魔力で動く三輪車を作ってみる事にしたんだ。


 8歳の子供であるルディーン君がもしグランリルから歩いてきたって聞いたら、まず間違いなくルルモアさんが怒ってお父さんとお母さんを呼び出すでしょうね。

 なにせ森に狩りに行ったらヘロヘロになって帰ってきたって言うだけで、お父さんは怒られたんですから。

 いや、もしそんな事になったら冒険者ギルドの人たちだけじゃなく、錬金術ギルドのメンバーも一緒になって説教モードかな?

 うん、これは絶対、歩いて西門になんか行かせられませんよねw


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